地下鉄建設の意義・注意点

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1、都市規模について

静岡市の人口は約72万人である。地下鉄がある仙台市の人口は約105万人と到底及ばない。しかし、大事なのは人口規模よりも、人口密度である。仙台市は1,340人/km²、静岡市は506人/km²とここでも違いはある。とはいえ、静岡市の地形をよく考えていただければわかるが、静岡市は平野部は大変に小さい。「市域面積の10%未満しかない平野部に人口の約98%が集中しており、残り市域の大半は非可住の山林である。」と言われている。この情報を基に、人口密度を再度計算してみた。静岡市の面積は1411.85km2なので、この10%とすると、約141.2km2ということになる。静岡市の人口の98%は約70.5万人と言える。計算すると、約4992.9人/km2、つまり約5000人/km2ということになる。地下鉄が通る福岡市の人口密度は4,330人/km²ということなので、基準はクリアしているといっても良い。東京のベッドタウンの市と同じくらいの値である。ベッドタウンの市は市外へ出るのが目的なので、都市型の地下鉄は不要であるが、静岡市は静岡市こそが中心であるため、都市型の地下鉄を建設しても問題ない。ただし、人口密度がそれほど高いとは言えないため、両数あるいは本数は他の大都市に比べて少なくすべきである。

2、バスが遅れる理由について

静岡市では「バスは時刻表通りには来ない」というのは、よく言われていることである。静岡市のバスの特徴としては、旧静岡市に限って言えば、静岡駅・新静岡駅を中心として、郊外へ放射状に延びている路線ばかりである。郊外の営業所を出発する時は定刻通りかもしれないが、市街地に近付くにつれて、その遅れの幅は大きくなっていく。
つまり、こういう仕組みだ。
停留所がAからJまであるとする。各停留所間で1分ずつ遅延する場合、J停留所に着く際には、8分遅れで到着することになる。例えば、F停留所で乗車する客にとっては、5分遅れでバスが来ることになる。つまり、終点(市街地)に近付くにつれ、遅れ時間は積算されるわけだ。
遅れの原因の多くは、市街地に向かう幹線道路の渋滞である。道路事情が悪い地域(片側1車線ずつ)の場合、決まって渋滞する。朝、交通情報を聞くと、必ずどこかで渋滞している。
渋滞が頻発すると本数を増やすことが困難になる。2本のバスが同時着ということが起きてしまうからである。よって、バスの本数は満足にあるとはいえず、朝晩はかなり混雑している。また、バスは料金が高いので、比較的坂の少ない静岡市では自転車を利用して移動することになる。また、自動車を使って移動することも多い。「クルマ・自転車社会」となる。このようにして車両が増えると更に道路は混雑する。「バスは高いし時間に不正確→クルマにしよう→クルマが増える→渋滞する→バスは時間に不正確」という悪いスパイラルに陥る。

ここで考えてみたい。静岡市民の全ての人が「クルマや自転車で通勤・通学したい」と考えているのか。もちろん、ドライブを楽しむ人は一定数いる。しかしながら、「やむを得ず」これらの車両で通勤・通学し、クルマを単なる交通手段としか捉えていない人が多数なのではなかろうか。もし、公共交通機関が安価で、時間に正確で、速くて、ゆったり座って行けるなら、そちらにシフトしたいと考える人は少なくないのではないだろうか。渋滞のイライラを好む人は少ないはずである。
また、静岡市は市街地の駐車場は大変混雑し、駐車料金も大変に高い。
よって、そういった交通機関を設立するのが急務といえる。

3、クルマ・自転車の楽しみ・安全性を高める

上記のように、公共交通機関にシフトする人が増えれば、道路には車両が減る。つまり、渋滞が緩和される。すると、クルマや自転車で通勤・通学する人にとっても、移動時間が短く、快適に走れるというメリットが生まれる。自転車通学の人にとっても、「晴れの日は自転車で、雨の日は公共交通機関を使って行こう」という選択もできる。クルマの人も、渋滞が軽減するため、快適にドライブを楽しめるだろう。利用交通機関の最適化は、双方にメリットがある。

4、バス路線の見直し

2で記したバスが遅れる理由。静岡市のバスは、基本的に走行距離が長い。よって、積算される遅延時間は、終点に近い停留所の利用者ほど、その被害は大きい。2の例で示すと、AからZまで走るバスの場合、Zに到着する時には25分遅れとなる。もし、AからJまでの区間の場合は、終点に到着する際にも8分遅れですむ。よって、バス路線の見直しは、路線の距離を短縮することが望ましい。郊外から無理に静岡駅まで走ることはない。最寄の地下鉄駅まで走行すれば利便性は確保できる。また、そのことによって、これまでの放射状の路線ばかりで、郊外A~郊外Bの移動は、必ずといっていいほど、静岡駅を経由する必要があったので、バスを敬遠する人が多かった。しかし、走行路線を短くすることによって、こういう地に新たな路線を設けるということもできるはずだ。よって、地下鉄が建設されない地に住む人も、こういったバス路線の見直しによって恩恵を受けるはずだ。

5、パーク&ライドシステム

ここまでの説明で地下鉄建設の意義は理解していただけたとは思うが、今まで自転車を愛用していた市民にとって、「駅まで歩く」ことは距離によっては苦痛である。「それなら自転車で目的地まで向かうよ」という人も出てくるだろう。こういう方にも地下鉄を利用していただけるよう、パーク&ライドシステムを提唱したい。これは、現在でもしずてつバスで行われている箇所もあるが、自転車で停留所まで乗って、停留所に自転車を停めて、そこからバスを利用していただくというものである。これを応用する。一部地下鉄の駅には、駐輪場を併設する。駅まで自転車、目的地まで地下鉄というパターンにしていただく。駐輪場を建設することにより、地下鉄駅周辺の路上駐輪も減少させることができる。
 また、駐輪場には何台か「レンタサイクル」を置いておく。これにより、「目的地最寄りの駅―目的地」までも自転車を活用していただくことができる。ICカードで会員認証、料金支払いを行えば、自転車の管理も容易である。これは、東京での実験もあったので、このシステムを取り入れることは困難ではない。

6、高齢化対策

高齢化が進むにつれ、高齢者の自動車の運転が問題となってくる。視力、聴力、判断力が衰えていく方が自動車を運転するのは大変危険なため、各警察は運転免許証の自主返納を促している。しかしながら、代替交通機関が無ければ返納できない。タクシーは高額で、バスも本数が少なく不便ということであれば、クルマを手放さない。よって、地下鉄建設&バス路線見直しで公共交通機関の利便性を高め、「寿IC制度」により、高齢者の公共交通機関利用を優遇することで、運転免許証の返納を促すことができる。また、5に記載した駐輪場の管理員をやっていただくなどすれば、雇用対策にもなる。

7、雇用対策

静岡市は東海工業地域であり、経済は他の地域に比べれば悪くはない。しかし、景気低迷の煽りを受け、静岡市の雇用状況・経済状況は決して良いとは言えない。地下鉄建設を行うことにより、建設業を活性化することができる。また、駅周辺の不動産開発により、不動産業界にも良い影響を与えることになる。それに伴い、駅周辺を中心に商業も活発になる。ICカードの活用も併せ、静岡市の経済を良いものにしていくことができる。

8、環境対策

言うまでもない。各人がクルマを使うより、公共交通機関を利用していただいた方が、温室効果ガスや有害ガスの削減につながる。

9、人口増加促進

静岡市自体が便利になれば、企業の進出を促せる。また、それに伴い、人口も増加する。住宅開発(ニュータウン・マンション建設)政策も併用することで、人口が増加し、税収も増える。

10、地価上昇政策

利便性を高める、商業を活発にさせることにより、周辺の不動産価値は高まる。これにより、地価・不動産価格が上昇する。景気が良くなる。

11、静岡駅前市街地の再開発

もちろん、地下鉄を整備するだけで、上記のような良い状況になるわけがない。都市部を魅力的にすることが大事である。そこで、静岡駅周辺・呉服町周辺の再開発を行い、商業施設を多く誘致する。具体的には、静岡駅南口に大型家電量販店・大型書店・大型雑貨店を誘致し、現在元気がないと言われている南口を活性化する。また、鷹匠地区を周辺に、ファッション関係のテコ入れをする。現在、109の出店によりにぎわっているが、周辺にも先進的なファッション関係の店の出店を促すことにより、けやき通りを日本有数のファッションの街にする。

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